先日初めてアートを買って、色々思ったので書きます。
アートを買うということが、今後日本で、世界でもっと身近になっていくといいなと思うし、そうなっていくであろうと思います。
欲しいアートがある、気になる作家さんがいる、という人に何か参考になればいいなと思っています。
また、初めてアートを買ったことで、私の目も変わり、今後は「買うか、買わないか」をある程度念頭に置いてアートを見るようになると思います。アート収集の第一歩として、初めて買ったアートとの出会いを記録しておこうと思いました。
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アートを買うということはとても私的なことである
私は趣味で絵を描くのですが、絵を描くということは、何をとっても個人的であると思います。被写体の選び方とか、材料とか、表現において力を入れるポイントとか、技法とか。言葉がない分、全体にその人の残り香があり、メッセージが発散されます。
今回アートを買って学んだのは、アートを作ることと同等に、アートを買うということも、とても個人的な体験なのだということです。
私がアートを買う前後の心境
①遭遇
買ったアート(絵)を初めてみたとき、「これはいい」と一目で思いました。
気に入ったのは、まず色使い、そして被写体です。色使いは、子供時代に好きだったものを想起させるもので、被写体は、近頃興味を持っているものでした。
しかし私はしがないフリーランサーですから、アートのような生活に必要のない、高価なものは簡単には買えません。「欲しいかも」という気持ちに若干の焦りや冷や汗をかきそうな後ろめたさを感じつつ、それにそっと蓋をして、家に帰りました。
②認識
家に帰って、夫にその話をしました。最初は軽ーく、「こんないい作家さんがいたよ」くらいの感じで。そのときはフーンで終わりました。
その後、何かの拍子に、何か別のものについて「買おうとしてるんでしょ」と言われ、「いいや、それは別にいらない。でも実は、前に話したあの絵が欲しい」と打ち明けました。まだ自分でも買う決意はなかったのですが、言葉に出したことで、意思が明確になった気がします。そうしたら、夫に「どんな作家さんなの?」と聞かれ、あまり何も知らなかったので勉強が足りなかったことを認識しました。
③勉強
そこで作家さんのサイトに行って、その人の他の作品や、欲しいと思っているシリーズに込められた考えなどを勉強しました。その絵は、作家さんの技法のもと、何層にも対象が描かれており、見る方向によっても表情が変わり、絵の中の空間的にも、表面的にも一度見ただけでは分からない深みや面白みがある、含蓄に富んだ作品なのです。絵という限定的な表現の枠を飛び出している感じがして、私はさらにそのアートに惚れ込んでしまいました。
これにより欲しいという気持ちがググンと増しました。
④相談
サイトを夫に見せて考えを話したところ、夫も絵そのものや、作家さんの考えに共感してくれて、ぜひ買おう、ということになりました。夫も出資してくれることになりました。
家族の賛同を得たことで、このアートを買うことはほぼ確定しました。
⑤所有
絵を実際に手にして、家で開いてからは、その存在感と細やかな表現に「やはり買ってよかった」と言う気持ちになりました。
今読み進めている『Collecting Art for Love, Money and More』という本に書いてあったことですが、アートを買う・所有するということは、そのアートと最も密接な関係を築くということなのです。私はそのアートと個人的で密接な関係を築いたことに心が満たされ、これからその絵を眺めて暮らせる、生活を共有できるということに幸せな気持ちになりました。
アートを買うほどの理由
アートというのは、生活必需品ではありません。トイレットペーパーなら、なくなる前に迷わず補充します。生活必需品は、買うかどうかを悩む必要はありません。
服や鞄は、必要だから買っているというよりも、もっとレパートリーが欲しいとか、最近流行のおしゃれがしたいとかで、買いたくてかっていることが多いと思いますが、それでも一定程度までは必要性があります。アートは生活必需品でない以上、「買う理由」が必要です。
さらにアートは、ピンからキリまでありますが、多くの場合高価です。「買う理由」があっても、それは「ちょっと欲しい」程度の気持ちではなく、「すごく欲しい」気持ちでないと、なかなか購入には至りません。前述したように欲しいと思う気持ちを後ろめたく思うような気持ちさえあるのです。
だからこそ、買うに至るほどのアートは、自分の子供時代だったり、思想だったり、憧れだったり、潜在意識に働きかけるものなのです。そして、これによって選んだアートと自分の関係性が非常に個人的で特別なものになるのです。
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アートを買う人におすすめすること
出会いを待つ
これほどビビッときたアートとの出会いは、私は初めてでした。それは出会いがあったからだと思っています。
アート収集のためのアート収集は大変色気がないと、個人的に思います。恋愛のための恋愛みたいなものを彷彿とします。特に惚れ込んでいないアートに、時間やお金を使うのはおすすめしません。アートも、惚れ込んでかわいがってくれる人のところに巣立った方が幸せなはず。
好きだという気持ちで作品を買えば後悔する可能性は低いし、毎日作品を眺められる幸せはお金には代えがたいです。
普段から少しずつ積み立てておく
出会いは突然くるものですから、今後やってくるその時に備えて、私はアート積立をすることにしました。例えば財布の中に500円玉が入ったらそれを必ず貯金箱に入れる、とか。しばらく貯めれば、欲しい作品に出会った時、満額は払えなくても助けになるのではないでしょうか。
作家さんについて学ぶ
気になる作品を見つけたら、作家さんについて学んでみましょう。公式ページを読み込んだり、SNSで作家さんのアカウントをフォローしたりして、その人の考え方や活動内容を勉強します。その人が作品に込めた想いに説得力があると感じられれば、購入の決め手になるかもしれないし、作品をより深く知ることができます。
思考を記録し、自分を知る機会とする
アートを買うことがあったら、そのアートと出会った時にどういう気持ちになったのか、買うまでにどういう気持ちをたどったのか記録してみると面白いかもしれません。
私の場合、今回こういう思考の流れを記録しようと思ったのは、まず逆の立場に立った時に、人はどういう気持ちでアートを買うに至るのだろうかということを整理したかったからです。そして、今後他にも作品を買う機会が自分にあったとして、収集に何か軸を持ちたいと思ったら参考になるかなとおぼろげに思ったからです。
思考を整理すると、自分の子供時代の憧れや、アートを買うときの後ろめたい気持ちなど、恐らく注意を払わなければ気づかずにやり過ごしてしまうかもしれない心理も洗い出すことができます。これは自分を知るきっかけにもなります。
家族と相談する/何かの記念として買う
私達は今回、結婚記念の品として買おう、という名目を決めました。これにより、買った作品がより特別な意味を自分達の中で持ったと思います。
私が一人でもんもんと悩んで、勝手に買っていたら、絵の存在感は違うものになっていたかもしれません。
アートは、多くの場合家の中に飾られるものです。共有する場所に飾るなら、夫婦や家族で相談して購入を決めると、家族皆にとって作品が特別なものになるんじゃないかなと思います。
アート収集家はよく年間予算を決めているとか聞きます。子供の誕生日にアートをプレゼントする親もいます。例えば1年に一回こういうタイミングで何か買ってもいい、ということにすると、買いすぎを防げるかもしれません。
現代アートを収集する面白み
現代アートという言葉は、ここでは生存している作家さんが制作したアートのことを指して使っています。
気に入る作家さんを探したり、見つけたりすることは非常に楽しいものです。近年は美術収集に関するオンラインサイトも数多く、Artsyなどで数えきれない作家さんや作品、ギャラリーを手軽にチェックできます。
一生手が届かないような価格のアートを制作した著名な巨匠も、活動しだしたころは名は知られておらず、当時の人にとって「手の届く価格」で買える時代があったのです。私達と同じ時代に生きている作家さん達が、未来に歴史に残る巨匠になっていくことを考えると、現代アートを買って、家に置くことができることのありがたみが深まる気がします。
それでは今日はこの辺で。
ビスダン!
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