すみよしの手帖

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ドイツでにんぷなう21 出産準備コース 〜分娩や子育てにおける日独の違い〜

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こんにちは、よしのです。

 

Twitterではだいぶ前につぶやきましたが、去る2019年2月に子供が無事外に出てきました。もう5ヶ月経とうとしています、ビックリ!!「にんぷなう」と言いつつ、もはや妊婦ではありません…。産後、子育てやら手続きやらで、ブログはすっかり放置ぎみですが、このシリーズは可能な限り地味に地道に書いていけたらなと思います。

 

さて、妊娠後期の内容に入ります。今日は出産準備コース(Geburtsvorbereitungskurs / GVK)について。

 

にんぷなうシリーズの関連記事はこちらからどうぞ。

 

 

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出産準備コース / Geburtsvorbereitungskursとは

分娩や産後の赤ちゃんのお世話などについて、知っておくべき知識を教えてくれる講座です。日本では両親学級などと呼ぶかと思います。

 

出産準備コースは受けるべき?

私は受けてとても良かったです。詳しくは後述しますが、自分に分娩への心の準備ができたこと、夫に分娩の基礎知識やサポートの心構えを持ってもらえたことがその理由です。

夫婦ペアでの受講をおすすめします!

 

コースの内容

一例として、私の受けたコースの内容は以下のようなものでした(訳:よしの)。

 

  • Information über Schwangerschaft, Geburtsvorgang, Gebärpositionen, Stillen und Wochenbett 妊娠、分娩、分娩ポーズ、授乳、産褥期に関する情報
  • geburtserleichternde Atem- und Entspannungsübungen 分娩を楽にする呼吸・リラックス法
  • Körperwahrnehmungsübungen, Körperarbeit und Massagen 自分の体を認識する、体操、マッサージ
  • Umgang mit Ängsten und Schmerzen 恐怖や痛みへの対処
  • Anregungen für den Partner, wie er seine Frau während Schwangerschaft und Geburt hilfreich begleiten kann パートナーへのアドバイス、妊娠・出産期の女性をいかにサポートするか
  • Veränderungen in der Partnerschaft パートナー関係の変化
  • Das Ur - Vertrauen in die eigenen Kräfte stärken und Sicherheit gewinnen いかに自分の力を信じ安心感を得るか
  • Förderung der Eltern-Kind-Bindung 親子の絆の構築

 

どんなコースがあるのか

分娩病院が主催しているコースのほか、家族向けの学習コースを色々と提供している組織が主催しているコースもあります。対象は大きく母親向けと、ペア向け。平日夜に複数回受講するパターンと、土日終日受講するパターンがあります。

私は、Haus der Familieというところが主催している、ペア向けの土日10時〜17時までのコースを受講しました。受講は妊娠33週以降に推奨されていおり、6ペア程度の小グループのコースで、とてもリラックスした雰囲気でした。言語はドイツ語ですが、先生の説明は非常にわかりやすかったです。

hausderfamilie.de

kidsgoなどのページで、最寄りで開催されているコースを検索することができます。

 

出産準備コースの価格

価格はコースで異なります。例えば私が分娩した病院で主催しているコースは、妊婦本人のみだと40 EUR、ペアで110 EUR。実際に受講したコースは、当時1人あたり119 EUR(つまり夫婦で238 EUR)。比べるとかなり違いますね。コースの内容や日程を見て、受けたいところのやつを受けるといいと思います。

 

保険適用条件

出産準備コースの費用は公的健康保険でカバーされます。

例えば公的保険のAOKの場合、助産師や産婆さんが提供しているコースであれば、妊婦だけでなくパートナーの分のコース費用についても、一部保険適用されることになっています。

www.aok.de

実際にコースの費用がカバーされるか、いくらまでされるかは申し込み前に各保険会社に直接確認するのが確実です。

 

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出産・子育てについて日本とドイツで違う常識

出産準備コースで聞いた内容で、結構日本とドイツで違うと思う点があったのでその内容を紹介します。

 

出産について

安産に有効と言われるもの

安産に効くというと何を連想するでしょうか。ラズベリーリーフティーや会陰マッサージは、日本でも妊婦なら聞いたことがあるかもしれません。しかしというとどうでしょう?

ドイツでは妊婦に割と当然のように鍼が勧められます。保険適用外、始めるのは36週以降です。私の通っていた婦人科の先生も鍼を施術しており、1回試しに打ってもらいました。両脚の足三里と三陰交というつぼ、あと頭に1本鍼を打って、20分くらいソファに座っていたと思います。

出産まで週に1回続けていると、陣痛時間が短くなるとか…私は1回しか受けなかった&結局帝王切開だったので、真偽のほどは不明です。

 

病院に行くタイミング

日本のいろいろなサイトを見ていると、大体陣痛が始まって10分ほどの間隔になったら病院に行く、と書いてあります。けれどドイツの場合は、これが5分間隔らしいです。結構悠長ですよね!?2人目以降は陣痛から分娩までの進行が速いので、早めに病院に行った方がいいというのは、日独同じだと思います。

 

分娩の段階分け

出産準備コースで、「分娩は何段階だか分かりますか?」と聞かれて、ネット情報を読みあさっていた私は自信満々に「3段階です!」と答えましたが、こちらでは少し様子が違いました…。

日本の分娩の段階分けは、陣痛開始〜子宮口全開までの第一分娩期、子宮口全開〜赤ちゃんの誕生までの第二分娩期、赤ちゃんの誕生〜胎盤が出るまでの第三分娩期の3段階ですね。

ドイツの場合は、Eröffnungsphase、Übergangsphase、Austreibungsphase、Nachgeburtsphaseという4つのフェーズがあります。意訳すると、開口フェーズ→移行フェーズ→押し出しフェーズ→産後処理フェーズ、という感じでしょうか。

Eröffnungsphaseは定期的な陣痛が始まってから最終的には2分間隔程度になるまで、そこからÜbergangsphaseの最後までには子宮口が10 cmまで開くということなので、この2つのフェーズが日本の第一分娩期に相当すると言えそうです。

Austreibungsphaseは頭位(赤ちゃんの頭が下向き)の場合、胎児の頭が骨盤を通り抜けるフェーズです。日本でいう第二分娩期に相当すると思います。Nachgeburtsphaseでは胎盤が出てきます。日本でいう第三分娩期ですね。

各フェーズは陣痛の波の動きとともに説明されたので、陣痛をベースに分類されているのかもしれません。

 

陣痛・分娩時の姿勢

日本では現在、フリースタイルや水中分娩を選べる分娩病院って何割くらいあるのでしょうか?私のイメージでは、まだまだこういう選択肢は少なく、いわゆる分娩台に仰向けに乗っかっていきむというところが多いのかなと思っています。

前々回の記事、「ドイツでにんぷなう⑲ 分娩病院〜選び方、予約登録、分娩以外でお世話になることなど」でも触れましたが、ドイツは基本的に分娩はフリースタイルのところが多く、水中分娩も希望に応じてできるよう設備が整っている病院が多いです。

さて、フリースタイルにはどのような姿勢があるのか。寝たままの姿勢でいると、子供が出て来にくいということで、便を出すかのように背中を丸めて踏ん張る姿勢が基本です。出産準備コースで紹介されたのは、四つん這い、和式トイレを使うような姿勢、分娩用の椅子(U字型っぽい座面の低い椅子で、赤ちゃんが出てくるところが穴になっている)に座る、天井から吊り下げられている太い布製の紐を引っ張る、などです。

陣痛時にとるとよい姿勢もいろいろと紹介されました。特に印象に残ったのは、パートナーがバランスボールに座り、妊婦さんがパートナーの腰に前方からだきついて、パートナーはいがいがのついたボールで妊婦さんの腰をマッサージするというもの。出産準備コースでは各カップルでペアになってこの姿勢を練習しました笑。

いざ陣痛が来たら多分お互いにどうしたらよいかわからないだろうから、事前にこういう練習をしておくと、すぐ使えそうで良いなと思いました。

余談ですが、日本では陣痛時のマッサージグッズとしてテニスボールやゴルフボールが人気ですね。私は念の為テニスボールを通販で買って用意していましたが、夫がこのイガイガマッサージボールを気に入り、追加購入。帝王切開だったので、分娩時はどちらも出番ゼロでした…。完全に夫の肩こり解消用になっています。

 

子育てについて

出産準備コースでは、産後の解説もあります。赤ちゃんの模型を使って各ペアでオムツ替えの練習をしたり、産褥期のことや子育てのことを教えてもらったり。そこで聞いたことで、特に日本とちょっと違うかな?と思ったことをご紹介します。

 

SIDS予防策

乳幼児突然死症候群、SIDS(Sudden infant death syndrome)を防止しましょうというのは日本でも言われることかと思います。

SIDSの予防策として現在推奨されているのは、うつぶせ寝をさせない、母乳で育てる、たばこの煙のない環境、親のベッドでの添い寝ではなく別のベッドに寝かせる、赤ちゃんの寝床には硬いマットレスを使用する、などです。

また、赤ちゃんの寝る場所に柔らかいものを置かない、というのもあわせて言われることです。枕も布団もNGなのです。最初は「まじで?」と思いました。布団なしでどうやって寝るの?と。そこで登場するのが、ドイツで超プッシュされる商品、「シュラーフサック」です。

シュラーフサックを直訳すると「寝袋」、物としてはいわば着る布団です。日本では「スリーパー」という商品名で売られているかと思います。

出産準備コースだけでなく、ヘバメ(助産師)にも小児科医にも言われました、「シュラーフサックを使いましょう。」子供が足をバタバタさせても顔に布団がかかる心配がないのがポイント。日本だと、まだあまりメジャーな商品ではなさそうな気がします。SIDS予防のためにスリーパーを使いましょうって、日本ではどれくらい言われるのでしょうか?

 

入浴回数とお風呂の温度

日本は夏など高温多湿なせいか、ネットの掲示板を見ていると子供は毎日お風呂に入れるのが常識のようですね。一方ドイツでは、赤ちゃんの入浴は1週間に1回でいいと言われます。これも、出産準備コースだけでなくヘバメにも言われたし、小児科医にいたっては「毎日体を拭いていれば、赤ちゃんに入浴は必要ありません」とのこと。

赤ちゃんのお風呂の温度は、36度〜37度。ヘバメには37度を超えてはいけないと言われました。日本のサイトの情報と比較すると1〜2度低いようです。日本の入浴文化、気持ちいいと思う温度の違いが関わっていそうな気がします。

赤ちゃんをお風呂に入れるってすごく大変な作業ですよね!うちは家に湯船がなく、自分がお風呂に入るついでに洗うということもできないので、毎週末に夫と二人掛かりでベビーバスに入れています。1人が支えて、1人が洗って。最近はあばれて周り中びちょびちょになるし、結構な大仕事です。これを毎日1人でやらないといけないとしたら、すっっっごくストレスだろうなぁと思います…。

 

授乳時の飲料・食事

母乳の出が良くなる飲み物、食べると母乳の味に影響を与える食べ物の紹介がありました。

  • 母乳の出が良くなる:炭酸水
  • 母乳の出を妨げる:ペパーミントティー、サルビアティー

授乳開始時は避けた方が良い食べ物として、にんにく、玉ねぎ、トマト、辛いもの、レモン、菜っ葉類。

しかしネットの日本語のページを見ると、にんにくを食べた方が赤ちゃんの母乳の飲みが良かったという調査結果もあるようです。

 

自分は、産前は基本的にガスなし水を飲んでいましたが、産後、炭酸水に替えました。夜はアルコールフリービールを飲んでから、フェンネルティーを飲んでいます。フェンネルティーも母乳の出が良くなるといわれる飲み物の一つで、産院で入院時に提供されていたものを飲んでいたのが習慣化して、今に至ります。カレーのような香りで、慣れるとホッとします。

 

離乳食

出産準備コースでは離乳食の話も出ました。ドイツでは4ヶ月目から与えられるベビーフードが、スーパーやドラッグストアなどに売っています。離乳食は4ヶ月目から絶対に与え始めなければいけないというわけではもちろんなく、遅くとも7ヶ月目までに始めればよいようです。小児科では、WHOは6ヶ月目から離乳食開始を推奨しているという説明がありました。

もうすぐ離乳食開始なので、いま日独の離乳食本を読みまくっているところなのですが、離乳食の開始時期以外にも日独で違う点がたくさんあることに驚きます。例えば、こちらでは離乳食開始時から離乳食に菜種油を追加することが勧められます。最初の食べ物は人参が定番で、他にもさつまいもやパースニップなどが最近は人気があるようです。また、肉や魚は特に何ヶ月目まで与えないという制限はなく、肉は脂質の少ないものであれば鶏肉はもちろん、牛肉でも豚肉でもOK、魚は逆に脂質の多いサーモン、ニシン、鯖などが勧められるようです。

 

出産準備コースを受けた感想

費用

高かったけど、週末集中型のペアコースを受けてよかったです!

保険がきいたので、自分の費用は9割以上戻ってきました。

 

雰囲気

コースはとてもリラックスしたムードです。部屋にヨガマットのようなものが1人ひとつずつひいてあり、クッションも好きなだけ使えて、だらだら横になりながら聞けました。お腹の大きな妊婦にはありがたいです。

 

夫に知識や心構えをつけてもらう

コースの知識・内容としては、ほとんどが事前にネットや冊子で勉強したことでしたが、夫と一緒に集中してがっつり聞けたのが良かった。夫は立会いを希望してくれて、私も子育ての出だしである出産から2人で主体的にやっていきたいという希望があったので、夫に分娩がどのようなものか、どんなサポートが可能かわかってもらうことがとても重要でした。私も、勉強した内容を随時伝えるようにはしていましたが、コースの先生から話を聞くと夫もなおさら納得しやすいようでした。

 

陣痛時に使えるテクニック

陣痛時の対応や心構えは非常に勉強になりました。陣痛のときはずっと寝ているのが一番良くないので、とにかく積極的に動く・リラックスする方法を見つけておく、など。陣痛時や分娩時の姿勢の写真を集めた本を先生が持ってきてくれていましたが、とても興味深く、参考になりそうと思いました。

カップルマッサージは知っているのと知らないのとではかなり違いそうです。私自身は結局前期破水&緊急帝王切開で陣痛が1分もなかったので、実際どれだけ助けになるかは体験として語れませんが、辛いときに夫がそばで支えてくれると心強いだろうなと思います。

 

分娩に向けた心の準備

陣痛や分娩が不安で仕方なく、ネットで体験談を読み漁り、出産動画を見まくったりしていましたが、コースで出産の仕組みについて説明を受けて、子供は準備ができたら出てくるもの、私がやきもきしても仕方ないんだな、と良い意味で諦めがつきました。そこからは出てくる子供を頑張ってサポートしようという気持ちに切り替えられました。

コースでは産後の話もレクチャーされるので、分娩のことばかり心配してしまいがちだったのが、子供が産まれた後の生活に意識を持っていくことができました。

 

出産準備コースを受けられない方におすすめのリンク

最後に、コースをペアで受けることは大変有意義だと思いますが、内容的にはBZgA(Bundeszentrale für gesundheitliche Aufklärung、連邦健康啓発局)が発行している妊娠・出産および子育ての冊子を見ればおおよそ同様のことが載っていると思います。

『Rundum - Schwangerschaft und Geburt』

https://www.bzga.de/infomaterialien/familienplanung/familienplanung/rundum-schwangerschaft-und-geburt/

『Das Baby』

https://www.bzga.de/infomaterialien/kinder-und-jugendgesundheit/das-baby/

ヘバメから聞くような話もこれらの冊子を見れば大体載っていますので、ヘバメが見つからないとか、出産準備コースに行けないという方にはこちらの冊子がお勧めです。

 

は〜、分娩完了までまだ続きますが、今日はそんなところです。

ビスダン。

 

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